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東京電機大学中学校・高等学校 専任教諭 池田巧氏にお聞きする、誰もがアントレプレナーシップに気づける学び場を創るためのコミュニティ形成

Sushi Tech TOKYO 2025イベント会場を背景に佇む、TIB Studentsサポーターの池田巧氏。

2013年からアントレプレナーシップ教育に携わり、ビジネスコンテストや企業連携プログラムを推進してきた実績を持つ池田巧氏

東京電機大学中学校・高等学校 社会科教諭という立場にとどまらず、MBA取得後に一般社団法人を設立するなど中高教員向けアントレプレナーシップ教育の普及に尽力。

今回はアントレプレナーシップ醸成のためにどのような取組を行われているか、学校現場におけるアントレプレナーシップの必要性や課題についてお話を伺いました。

アントレプレナーシップ教育と出会い、生徒の想いに感銘を受け、起業を経験

インタビューに応じるTIB Stundetsサポーターの池田巧氏。

– 専任教諭を務められながら様々な役職を担っておりますが、お取組内容についてご紹介頂けますでしょうか?

本校では社会科の専任教諭として、主に高校2年生や3年生の公民科目(公共や政治経済など)を担当しています。

知識を教えるだけでなく、行動できる人を育てたいという観点から、アクティブラーニングやプロジェクトベースドラーニングといった形式を取り入れています。また、校務分掌としては入試広報を担当し、生徒たちの取り組みや学びを外部の方々に伝える役割も担っています。

2013年からこの学校でアントレプレナーシップ教育に携わっています。最初は私が入る前からあった高校生経営ワークショップというプログラムに参加したのがきっかけでした。

そこから関わりを深め、プログラムを増やしたり、ビジネスコンテストへの出場や社会課題解決のプログラムを生徒に提供したりしてきました。

特に印象的だったのは、生徒たちが「こういう社会課題を解決したい」「こんな未来を実現したい」と自ら学んだことを言語化しピッチで発表する姿です。

彼らの熱意に触れるうちに、私にはいったい何ができるのかと考えさせられることが多々ありました。

そこで早稲田大学 大学院経営管理研究科(通称:早稲田大学ビジネススクール・WBS)に通ってMBAを取得し、また、経済産業省 起業家育成プログラム 始動への参加を経て、自らもアントレプレナーシップを「発揮して挑戦する立場」を経験してきました。

「誰もがアントレプレナーシップに気づける学び場を創る」ためにできることを日々考えています。

学校現場におけるアントレプレナーシップの必要性と課題

真剣な表情で質問に答える池田巧氏

課題感等があれば教えていただけますか?

これまでの学校現場ではアントレプレナーシップはあまり必要とされていなかったように感じています。しかし、教員の成り手不足や少子化など時代が変わる中で、学校も現状維持(前例踏襲)だけでは不十分な時代になっています。

教員こそ新しい価値を生み出そうとする姿勢をもち、生徒と一緒に学校を変えていく機運を醸成していく必要があります。

学校は1年間のルーティンを回すことが主な業務なので、新しいことに取り組むのは難しい面もありますが、このままでは教員が疲弊してしまいます。教員に限らず、生徒にとっても保護者にとっても価値のあるものを作っていく必要があると思います。そんな今だからこそ、学校現場にもアントレプレナーシップが必要なのではないでしょうか。

とはいえ、現場への浸透がまだ十分に進んでいません。学校の中でアンテナを張っている先生や必要性を感じている先生が散見される段階で、まだ大多数に広がっていないのが現状です。

このままでは草の根的にしか広がらないので、多くの先生や生徒に広めていく必要があります。社会科だけでなく、理科の先生や家庭科の先生、生徒会顧問など、多様な立場での導入により、日常的な浸透を図ることが重要です。

その上で、私が考える対策は二点あります。

一つはマインドセットを変えていくこと。相手の意見に対して”Yes, and…”と肯定的に付け加えていくような姿勢が学校現場に浸透するだけでも、基本的な意識変化による大きな効果が期待できます。

二つ目はスキルセットの習得です。アントレプレナーシップの基礎知識や「考えて検証して試してみる」ことを実践させるうえで押さえるべきポイント、適切なフィードバック手法など、具体的なスキルを教員が身につける必要があります。

マインドセットとスキルセットの両輪があることで、アントレプレナーシップ教育の普及が実現できると考えています。

TIB Studentsに対する期待と魅力

身振りを交えて、TIB Studentsの期待と魅力を語る池田巧氏。

– TIB Studentsに対する期待や魅力について教えてください。

私が当プログラムに期待することは、大きく分けて二つあります。

一つは学校現場では得られない学びの機会がある点です。

起業家の方は学校現場からは遠い存在で、意図的に接点をもたない限り、なかなか会うことができません。起業家の方々は使命感を持って取り組んでいるので、その学びを生徒たちに還元できるのは大きな魅力です。

もう一点は、教員同士が高め合うコミュニティがあることです。

教員は通常、自分の学校内で活動することが多いのですが、当プログラムを通じて他校の先生や起業家など様々な方と出会える点が魅力です。そこでのセレンディピティ(偶然の出会いや発見)が、学校現場をより良くする価値を生むと思います。

新しいアプローチを模索する学校が、当プログラムを取り入れることで得られる価値

笑顔を見せながら、当プログラムの価値を語る池田巧氏。

学校側が当プログラムを導入するメリットはありますか?

ある程度形ができているけれど新しいエッセンスが欲しい、何か新しいことをやってみたいけれど何をすればいいか分からない学校現場に当プログラムをお勧めしたいです。

講師の質が高く、事務局のサポートも手厚いので、先生方の負担は少なく、生徒の行動変容が起こりやすくなります。

また、探究の授業に力を入れたい学校との相性も良いのではないでしょうか。起業家の方を意図的に招くことで、新しい知見や視点、探究の着眼点が得られます。これまでにない探究の仕方を知るきっかけになると思います。

その上で、二つの特徴を備えたサポーターが生徒に響くと思います。

一つは挑戦を後押ししてくれる方です。学校では「与えられた命題」を通じて学ぶことが多いのですが、起業家の視点では、自ら解を創り出していくプロセスそのものから学びを得られます。

もう一つは、アウトプットするまでにもがいた経験のある方です。学校の探究では多くのアイデアが生まれても、授業が終われば捨てられてしまいます。最後までもがいて挑戦した起業家の存在は、生徒たちがアイデアを実現するための大きな励みになります。

特に実体験を伴った具体的な話の方が生徒には伝わりやすく、自分自身が体を張って検証に取り組んだような話は心に響きます。ものづくり系の話は特に、形が見えるという点で高校生に響きやすいと感じています。

中高生の指導だけでなく、教員同士が高め合うためのコミュニティ形成にも注力

今後のTIB Studentsの展望を語る池田巧氏。

– 先生方にとって、本事業はどのような機会になると期待していますか?

アントレプレナーシップ教育に携わる中で、各学校で一人だけでプログラムを回し、どう発展させたらいいか分からずにもがいている先生たちと出会いました。

私自身も最初は一人か二人で始めた経験があるからこそ、同じ思いを持つ先生たちをつなげ、知見を共有できる場を作りたいと考えるようになりました。それが一般社団法人アントレ教員ラボの立ち上げのきっかけとなり、教員のアントレプレナーシップ開発や支援を行うようになりました。

生徒たちにアントレプレナーシップを持ってもらいたいなら、教員自身がアントレプレナーシップを持ち、挑戦する姿勢を見せることが大切だと感じています。

何をすればいいか分からない先生も多いと思いますが、TIB Studentsに参加し、先生同士が集まり、新しい挑戦をしていくことで、その行動が生徒たちに伝播していくのではないでしょうか。

アントレプレナーシップは壮大なものではなく、「新しいことに挑戦する」なかで、日々の授業での小さな工夫や変化、ブラッシュアップも含まれると思います。

小さなクリエイティビティを持つだけでも十分です。自分では気づけない盲点を発見するためにも、一歩を踏み出して小さな挑戦を共に実施していきたいですね。

当プログラムに参加することで、皆さんが変化するきっかけになると確信しています。

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