株式会社CroMenの代表取締役を務める清水 香央里氏。
日本女子大学附属高等学校、日本女子大学を卒業後、 2005年に株式会社オプトに入社し営業に従事。
その後、マーケティングコンサルティング会社にて、大手飲料・消費財・製薬メーカー等の商品企画・販促戦略のプロジェクトリーダーを務めました。
2012年よりアントレプレナーシップ醸成プログラム「Cross Mentorship」を立ち上げ、翌2013年に株式会社NN-Lab(現CroMen)を設立。現在「Cross Mentorship」は全国で展開し、1,500名以上が参加しています。多数の若手起業家も輩出しており、その知見を活かして大学法人や行政に対し、アントレプレナーシップ醸成プログラムの企画運営を提供しています。
今回はTIB Studentsサポーターを務め、起業家としても第一線で活躍する清水氏に、TIB Studentsサポーターとして若者と触れ合う際に意識している点や、その魅力や意義についてお聞きしました。
創業の経緯と背景
– なぜ株式会社CroMenを創業したのですか?
株式会社CroMenを設立したのは2013年のことです。きっかけは、友人の会社が受託した学生向けイベントをお手伝いしたことでした。
参加者たちと時間を共有していく中で、私自身がその活動に深く魅力を感じ、事業化したいと思うようになったんです。
私は医者家系の出身で、「男の子は医者、女の子は結婚」というステレオタイプな環境で育ちました。親戚が集まる場で、弟が「お医者さんになる」と言うと皆が喜ぶ一方で、私が「私は何になるの?」と周りに聞くと、皆が困った顔をするのです。
「私が何かになることは誰も喜んでくれないのだろうか」と感じるようになり、自分の進路や目標について消極的になっていました。
転機は大学時代でした。様々な友人と出会い、アートイベントや起業を目指す人たちと交流する中で、「自分も何かに情熱を傾けられる生き方がしたい」と考えるようになりました。
これまで自分自身が試行錯誤しながらやりたいことを見つけてきた経験を、多くの人に届けていきたいと強く思うようになったんです。
TIB Studentsサポーターとして学校でプログラムを行う際に心がけていること
– 実際派遣されてどうでしたか? 体験談や気づきを教えて下さい
TIB Studentsサポーターとして、これまでに2校で講義を担当させていただきました。
私の会社で実施しているプログラムの特徴は、「やりたいことの言語化」という若者が直面する課題に正面から向き合う点にあります。本来であれば企業経営で用いられるミッション・ビジョン・バリューのフレームワークを個人レベルに応用し、自分自身の軸を見つけるサポートをしています。
派遣された時のプログラム構成は、講演とワークショップの組み合わせを基本としていますが、学校のニーズに合わせて柔軟に対応しています。
生徒の探究学習の発表会や、ビジネスプランのプレゼンテーションに対してフィードバックを行う形式も取り入れており、一方的な講義ではなく双方向のコミュニケーションを重視しています。これまでに経験した2校は、それぞれ異なる規模でした。
40〜50名の学年全体を対象とした学校では、限られた時間の中でも生徒一人ひとりに何かしらのメッセージが届くよう、印象的なキーワードやエピソードを織り込むことを心がけました。
一方、10数名のゼミ形式の学校では、エンジン開発やセキュリティアプリ開発といった生徒の具体的な興味関心を深く聞き取り、個別の相談にも対応することができました。このように少人数だからこそ可能な、一人ひとりと向き合う時間は非常に貴重な体験だと感じています。
活動を通じて最も印象深かったのは、生徒たちが求めているのは理想論ではなく、リアルな体験談だということです。
「今の自分の悩みと共感できる部分が多く、自分も頑張ろうと思えました」という生徒からの感想は、私自身の過去の挫折や試行錯誤の経験が、誰かの励みになり得ることを教えてくれました。
完璧な成功ストーリーよりも、等身大の失敗や葛藤を共有することで、生徒たちの自己肯定感を高められるのだと実感しています。
TIB Studentsサポーターとして活動することの魅力
– 最後に、本サポーターとして活動することの魅力について教えてください。
若者との交流では、普段とは全く異なる思考回路が刺激され、新しい視点を獲得できます。
例えば、高校生は社会経験が少ない分、非常にピュアで大人に媚びない姿勢が印象的で、「好きだから」という純粋な理由で物事に取り組みます。一方、大学生は行動範囲が広がる分、研究や課外活動など私の経験したことのない経験から得た視点を持っており、それぞれから学ぶことが多くあります。
私が心掛ける若者に対しての後押しは、行動を起こす・チャレンジすることを促すことだと考えています。そのためには具体的な目標設定が不可欠です。
例えば、ダイエットでも「いつまでにこの服を着たい」という明確なイメージがあると行動しやすくなるように、自分の未来を具体的に描く力を育むことが大切です。
また学生と接する際は、一人ひとりの強みや良さに注目することを心掛けています。生成AIを活用したワークショップなど、私にはできない能力を持つ若者が多く、そうした才能に対してリスペクトを持つことが必要だと感じています。
TIB Studentsサポーターとしての最大の魅力は、自分の当たり前が通じない世代との交流を通じて、固定観念が崩され、自分自身がアップデートされる機会になることです。
普段接している人たちに通じる言葉が、若い世代には通じないことも少なくありません。その際に、どう伝えるべきかを考えることで自分の価値観に柔軟性が生まれます。
このように、お互いの成長につながる点こそが当プログラムの本当の価値だと感じています。