アジア最大級のスタートアップカンファレンス「SusHi Tech Tokyo 2025」。
“Sustainableな都市をHigh Technologyで実現する”というビジョンのもと、世界各地から人々が集い、未来に向けた議論と実践が交わされる場となっています。
5月8日から10日にかけて行われた会期中は、イノベーションやスタートアップの成長を加速させる出会いが数多く生まれ、大きな賑わいを見せました。
本レポートでは、その最終日である5月10日のパブリックデイに実施された「未来をつなぐアントレプレナーシップ教育 公開授業&パネルディスカッション」の模様を中心に、ワークショップの様子も一部ご紹介します。
事務局からの挨拶 – イベント趣旨説明

本イベントの冒頭では、デロイトトーマツの岡村綺音氏が登壇し、事務局からの挨拶とイベントの趣旨について説明が行われました。
TIB Studentsとは
TIB Studentsでは、アントレプレナーシップ教育における重要な土台として、「自己理解」「社会課題の発見」「アイデアの検証」という三つの要素を掲げています。
まずは、自分自身の内面に向き合い、どんなことに興味があるのか、あるいは苦手に感じているのかを知ることが出発点になります。
次に、社会を観察しながら、自分の関心や思いをどこに接続できるのかを探っていきます。
そして最後に、他者と協働し、ときに切磋琢磨しながらアイデアを形にしていく。こうしたプロセスこそが、アントレプレナーシップを育むうえで欠かせないと私たちは考えています。
今回のイベントを通じて、こうした視点をもとに、現代の子どもたちにどのような学びを届けるべきか、何が本当に大切なのかを、参加者の皆さまと共に考えていく機会にできればと思っています。
TIB Studentsでは、実際に起業に挑む方々や、社会課題に取り組む多様なロールモデルの講師を学校に派遣し、それぞれの現場に合ったかたちで「挑戦の体験」を届けています。
現在のテーマは、「挑戦をもっと身近なものにする」こと。
日本では、自分の意思を行動に移すことに対して不安を抱える人が少なくありません。だからこそ、実際に挑戦している人と出会うことが、その意識を大きく変える一歩になると考え、東京都の事業としても力を注いでいます。
現在、約220名のサポーターが活動しており、大学関係者や起業家、NPOなど多様なバックグラウンドを持つ方々にご協力いただいています。事業はまだ1年目ですが、今後さらに仲間を増やし、多くの学校に新しい学びの機会を届けていく予定です。
学校の外へ、挑戦をつなげるために
学校でアントレプレナーシップを学ぶことは貴重な経験ですが、それだけで終わらせず、次のステップにつなげる機会も大切にしたいと考えています。
そこで、より継続的に挑戦できる場として、生徒・学生向けの外部プログラム発掘にも力を入れてきました。
2024年度には、体育館を使った大規模な実施から、クラス単位の少人数開催まで、学校の要望に応じて柔軟に派遣を行ってきました。
中学3年生以上の生徒を対象とした取り組みでは、おおよそ80%が「満足」と回答しています。
2年目となる今年度は、各校から寄せられたご意見をもとに、より価値ある体験を提供できるようブラッシュアップを進めています。
生徒の皆さんからは、「自信がなくても、挑戦するチャンスはすぐそばにあると分かった」「挑戦自体には思っていたほどリスクがないことに気づけた」といった声をいただいています。
また、先生方からは、授業に加えて社会のロールモデルから直接話を聞けることで、生徒の価値観や進路観に良い刺激を与えられているという声も多く寄せられました。
データとしても、派遣授業の前後で「挑戦してみたい」という意識のスコアが約1.18ポイント上昇するなど、実体験に触れることが大きな変化をもたらしていることが確認されています。
この取り組みは、私たちだけの力だけで進めるものではありません。今後も関係者の皆さまと連携しながら、より良い学びをともにつくっていきたいと考えています。
この後のセッションでは、アントレプレナーシップとはそもそも何なのか、どのように育まれるものなのか、そして私たち大人がどのように機会を提供していくべきなのかなど、未来の教育のあり方を、皆さまと共に考える時間にしていければと思います。
若者が未来をつなぐ、次世代に向けたアントレプレナーシップの実践
TIB Studentsでは、事業者やサポーター、プログラム提供者の皆さまと連携しながら、アントレプレナーシップの醸成に取り組んでいます。
今回のイベントでは、理論だけでなく実践の機会も設けられ、生徒や若者たちが子どもたちに向けたワークショップを企画・運営し、先進技術を楽しく学ぶ体験を提供していました。
会場では世代を超えた交流が生まれ、参加者同士が学び合う活気ある空間となっていました。
たとえば、東京都立晴海総合高等学校・国際ビジネス系列の3年次生徒によるワークショップでは、「やりたいけれど実行に移せないストレス発散法」の代替となるサービスを考えるというテーマが掲げられました。
身近な課題を起点に創造的な解決策を探るプロセスが体験できる内容となっており、参加した子どもたちからは「自分でもアイデアを形にできそう」といった前向きな声が聞かれました。
若い世代が次の世代に向けて主体的にプログラムを運営する姿は、まさにアントレプレナーシップを実践する生徒たちの情熱と成長を感じさせるものでした。

当日は、東京都知事の小池百合子氏も視察に訪れ、生徒たちの取り組みに熱心に耳を傾けておられました。こうした姿からも、この活動への社会的関心の高さが伺えます。

また、自由ヶ丘学園高等学校の生徒によるワークショップでは、「次世代の教育にAIは必要か?」をテーマに、高校生の視点からAIと教育の関係についての議論が行われました。
急速に発展するAIが社会でどのように活用されるべきか、自分たちの未来にどう関わってくるのかについて、参加者同士で真剣に意見を交わす時間となりました。
このような実践的な学びの場が、日本の未来を担う人材育成の新たなモデルケースとして、今後さらに注目を集めていくことが期待されます。